
NLP講座第3回
相手の「優位感覚」に合わせたコミュニケーションをしょう!
前回は、相手に対して言葉を届けるためにはまず「ラポール(=信頼関係)」を築く必要があるとお話しました。
そして、そのラポールを築く方法として「ペーシング」を紹介しました。
ペーシングとは「相手に合わせる」という意味です。ペーシングによって相手に合わせ、徐々にラポールを構築していく。その結果として相手は安心して心を開いてくれるのでこちらの言葉も伝わりやすくなるというわけです。
そして、より深くラポールを構築するためには、
コミュニケーションをとる相手の無意識レベルの反応に合わせペーシングをとっていくことが効果的です。
無意識レベルの反応とは、呼吸や姿勢や話すスピードなどのこと。
今日の内容では、そんな無意識レベルの反応に合わせる際の着眼点として、NLPでも紹介されている「優位感覚」の概念について紹介していきます。
優位感覚とは
人間には、視覚・聴覚・身体感覚・味覚・嗅覚の五感があります。
五感の中でも、人によって得意な感覚がそれぞれ違う事を知っていますか?
その人が得意とする感覚をコミュニケーションの世界では、「優位感覚」と言います。
たとえ、同じ体験をしたとしても、
優位感覚が人によって違う事で、
感じ方・表現の仕方に違いが出てくるのです。
今回は、この「優位感覚」の概念を紹介します。
この「優位感覚」の概念を知っておくと、コミュニケーションする際に
相手の優位感覚を考慮した話し方や伝え方が出来るので
メッセージが届きやすくなるので、ぜひマスターしてくださいね!
優位感覚とは、人間を感覚別に3つのタイプに分けてその特徴を説明するものです。
それは、
- 視覚優位型
- 聴覚優位型
- 身体感覚優位型
の3つです。
NLPでは、Nは五感を意味していますが、それは、
V(Visual)・・・視覚
A(Auditory)・・・聴覚
K(Kinesthetic)・・・身体感覚
のVAKで捉えるとはすでにお話した通りです。
(NLPでは、嗅覚・味覚・触覚は身体感覚(Kinesthetic)として1つにまとめて捉えています)
そして先ほどの3つの優位型というのは、それらVAKのそれぞれに対応しているわけです。
私たちには右利き、左利きなど、利き腕がありますよね?
他にも、右目や左目でもよく使う方の目が疲れやすかったり、
右の奥歯と左の奥歯とで噛む頻度が異なっていたり、
無意識的によく使う方法の感覚があると思います。
それと同じで、五感においても、気づくことなく無意識的に使ってしまう感覚があるのです。
それでは次に、それぞれ3つの優位型の人の特徴について紹介していきます。
視覚優位の人の特徴
視覚優位型の人は、音や感覚よりも、イメージや絵、映像で物事を捉える傾向にあります。脳内でイメージを組み立てながら思考を進めていきます。
頭に浮かんだ何らかのイメージをもとにペラペラと話すタイプで指導者や社交家に多い傾向にあります。
「将来の展望が明確になった」
「この図を見ればなぜこの商品が優れているか分かる」
「これからその全貌が明らかになる」
など、「見える」「見えない」といった視覚に関する言葉をよく使う傾向にあります。
優位感覚の違いは、感じ方ばかりではなく、
表現方法の違いも生み出します。
先程の「ハワイの海」をイメージするワークでも知ってもらったように
優位な感覚で感じるから、その優位な感覚をつかって表現しようとするのです。
そのため、優位感覚の違う人同士で会話をすると
話しが伝わりにくくなり、
意思の疎通が図れないとミスコミュニケーションを生んでしまいます。
たとえば、愛情表現を例にとってみましょう。
ある男性が、最近仕事で忙しくしていて、
「パートナーに寂しい想いをさせたなぁ」
と反省しています。
そこで、『今日は普段はしないけど
しっかりと愛情表現をしよう!』と決心したとします。
そんな彼は視覚優位、パートナーは身体感覚優位だとしましょう。
彼は、何も知らずにこう考えます。
「前から欲しがっていたダイヤモンドを買ってあげよう」
「キラキラに輝くダイヤモンドを見たら、きっと喜ぶぞ!!」
このパートナーを喜ばせようとする彼の作戦の間違いに
あなたは気付くことができていますか?
彼の妄想は、『視覚優位な人が視覚優位な人を喜ばせる』作戦なのです。
つまり、
身体感覚優位なパートナーが欲しいのは、
『キラキラ輝くダイヤモンド』でも、『愛の言葉』でもなく、
身体感覚として、愛情を感じることなのです。
もしかしたら、彼のパートナーはキラキラのダイヤモンドを前に
『本当に私が欲しいのは、モノじゃないのよ!』
と怒り出すかもしれません。
彼からしたら、なぜパートナーが怒ったのか理解できません。
それどころか、彼も気分を害してしまって・・・
というパターンにもなりかねません。
よって、このケースでいえばパートナーの優位感覚に合わせて
パートナーを抱き寄せてハグしたり
腕を組んで散歩を楽しんだりすることが正解と言えます。
視覚優位の人とはなすときは
あなたが話している人が視覚優位だと分かったら、
視覚優位な人の特徴を逆に利用して
コミュニケーションを図るのがいいでしょう。
つまり、絵やイメージを図解しながら説明してあげたり、
相手の人が頭の中でイメージを作りやすいように
視覚情報をたくさん盛り込んで話をしてあげるのです。
たとえば、
「来週の記念日のディナーはガヤガヤしてない、静かで落ちついた所で食事したいな」
と伝えるのではなく、
「来週の記念日のディナーはお客さんの人数が少ない店で、ちょっと薄暗いけど
キャンドルがキレイに灯ってて、二人の会話を楽しめるようなお店が良いな」
と言った方が、視覚優位な人にはイメージしやすく店探しもしやすくなるでしょう。
聴覚優位型の人の特徴
聴覚優位型の人は、音や文字、言葉、数字で理解、記憶、表現する傾向にあります。
視覚優位型の人が脳内でイメージを組み立てていたのに対して、聴覚優位型の人は脳内で音を受け取りながら物事を考えています。
論理的に考えたり、理屈っぽい人に多く、経理、参謀役、営業などに多いタイプです。
「人聞きが悪い」
「理にかなっている」
「ざわざわ」「ガーン」
など、聞く、話す、といった意味の言葉をよく使い、擬音語も多用する傾向にあります。
聴覚優位の人と話すときは
観察を通して、相手のの人が聴覚優位であることが分かったら、
聴覚優位な人の特徴を生かしたコミュニケーションを心がけましょう。
まずは、聴覚情報でもある
あなたの声の調子・リズム・抑揚などを相手の人(相手の優位感覚)に合わせましょう。
そうすることで、相手の人にとって心地よく感じてもらうことが出来ますし、
その人の特徴に波長を合わせることで、
「この人は自分と同じタイプの人だなぁ」と感じてもらうことも出来るからです。
また、聴覚優位な人はロジカルに物事を処理・表現することが得意なので、
話を伝える際には、論理立てて話をすると理解してもらえやすくなります。 また、その際に数字やデータなどを示しながら伝えることも良いでしょう。
指導や教育を行う際には、出来る限り対面で時間を取るようにします。 「この本を読んでみて!参考になるから!」で済むような場面でも あえて、あなたの口から語るのです。 そうすることで、相手の人は情報を聴覚情報として処理できるので 理解がしやすくなります。
また、聴覚優位な人は、人との会話を通じて
学んだり感銘を受けたりするので、
そういった機会をセッティングしてあげることも効果があります。
たとえば、
・相手にとって学びが深められる話をしてくれるような人を紹介する
・相手が気づきを得られるであろう研修会・セミナーに出席させる
などがこれに当たります。
私の経験では、こういったことを通じて聴覚優位な人の
学びや気づきを深めるお手伝いが出来ると感じています。
身体感覚優位型の人の特徴
身体感覚優位な人について説明します。
身体感覚優位な人は、
『自分の感覚を大切に受け止めてから、表現する』
という特徴があります。
感覚を大切に受け止めることに時間を使うために、
ゆったりとしたテンポでのコミュニケーションになりやすく
返答も遅くなりやすい傾向があります。
また、表現方法の特徴として、
『自分の感覚を大切にした表現』を多く使います。
身体感覚優位型の人は、感覚的に考え直感を大切にして思考します。
「〇〇な感じがする」といった身体で感じるものを大切にします。
相手を感動させることが好きで、インストラクターやエステティシャン、販売員などで力を発揮する人が多い傾向にあります。
「しっくりこない」
「腑に落ちない」
「意味を掴む」
など、身体感覚と関連づけた言葉使いをよくする傾向にあります。
身体感覚優位の人と話すときには
身体感覚優位な人と話すときには、その人が感じている
『身体感覚』が共有できていない・理解できないと感じた時には
都度確認して、お互いのイメージが同じになるようにする必要があります。
たとえば、理学療法士がストレッチのやり方を他職種に指導する場面で、
身体感覚優位な人は、
「ストレッチしていったら、グッと抵抗感が出てくるから、痛くない範囲でグーっとさらに伸ばしてほしい」
のような表現をします。
身体感覚を表現してくれているので、指導されて分かりやすい反面、
情報の正確さに欠けてしまうので、適宜、確認して情報を補うようにすると良いです。
では、逆に身体感覚優位な人にこちらが情報を伝える時や
業務上の指導を行う際の注意点は何でしょうか?
身体感覚優位な人は、受け取る身体感覚を大切にします。
私は、その特徴を活かして、身体感覚情報を多く伝えるようにしています。
身体感覚情報を伝える時の工夫としては、
触ったり、体感できるものは実際に体験してもらうようにします。
たとえば、後輩を指導する際に、
口頭での伝達では理解が出来ていないのではないかと感じると、
「じゃあ、実際に一緒にやってみようか」とか
「一回やってみてから、分からないところをもう一回聞いてくれる?」
などのように伝達します。
すると、相手は一度伝達された内容を『身体感覚情報』に翻訳することが出来るので
理解が進み、私と共通のイメージを共有することも安易になりやすいと考えます。
相手の優位感覚に合わすとは?
そして、NLPでは相手の優位感覚に合わせてこちらもコミュニケーションを進めていくことで
相手とラポールを築きやすくなると言います。
先ほど、相手の無意識的反応にこちらも合わすことで効果的にラポールを築けると説明しましたが、
まさに優位感覚の現れこそが無意識的な反応だからです。
相手の優位感覚に合わせたコミュニケーションとは、
相手の優位感覚に合わせてこちらも身振りを変えたり、選ぶ言葉を変えるということです。
そのためには次のことを試してみましょう。
①視覚優位型の人には
・イメージを使って説明するようにする
・視覚に訴えかける言葉使いを多用する
・こちらも身振り手振りを加えながら説明する
②聴覚優位型の人には
・論理的に説明するようにする
・数字で説明するようにする
・擬音語などを使うようにする
③身体感覚優位型の人には
・感覚的な表現を使うようにする
・気持ちや直感などを話に盛り込みながら話す
・相手の感じ方を大切にする
さて、相手がどの優位型なのかというのは、その人のコミュニケーションの癖などからなんとなく目星がつくものかと思いますが、
NLPではそれをある程度判別できる指標を出しているので紹介します。
相手の優位感覚を知る方法
①視覚優位型の人の傾向
声:トーンが高音、テンポが早い
呼吸:浅い
姿勢:背筋が伸び、顔がすこし上を向く
よく使う言葉:見える、明らかになる、びっしりつまった予定など、視覚的な言葉
②聴覚優位型の人の傾向
声:トーン・テンポともに①③の中間
呼吸:中間
姿勢:普通
よく使う言葉:理にかなう、人聞きが悪い、〇〇の定義は、など聴覚的、論理的な言葉
③身体感覚優位型の人の傾向
声:トーンは低音、テンポは遅い
呼吸:深い
姿勢:丸い感じ、下向き、ゆっくりと動作
よく使う言葉:しっくりくる、腑に落ちない、あたたかい人、人当たりが良い
まとめ
最後に、優位感覚が分かれば、
あなたの学習方法をそれに合わせて変化させることで、
あなたの学習がより効率的になることも覚えておくと良いと思います。
視覚優位な人なら、読書や資料の閲覧を通じて
聴覚優位な人なら、人との会話や交流を通じて
身体感覚優位な人なら、実際の体験を通じて
学びを加速させるのです。
悲惨なのは、あなたを指導してくれる人が、あなたと優位感覚が違う場合です。
たとえば、身体感覚優位なあなたに、上司が
「より専門性を高めるために、たくさんの本を読みなさい!」と指導したとします。
これは視覚優位な人には有効ですが、あなたに有効とは限りません。
この場合だと、
「まずは、どんどん経験を積んでみなさい。触って感じながら勉強するんだ。そのうえで本も読みなさい」
と言われた方が学習が加速します。
あなたの指導者が、あなたと優位感覚が違うかもしれない可能性も考慮して
アドバイスを聞くようにすると良いでしょう。
NLPでは、言葉を使って相手、もしくは自分自信を誘導していきます。
もし相手を誘導する場合には、「ラポール(信頼関係)」を築く必要があります。
ラポールを築いていくプロセスのことを「ペーシング(合わせる)」と言い、その方法の1つとして相手の優位感覚にこちらも合わせていく方法をご紹介しました。
実際みなさんも、自分と話す言葉選びが似ていたり、会話や呼吸のペースが似ていたりする人と一緒にいると落ち着くのではないでしょうか?
逆に、その意味で自分とは異なる人と一緒にいると疲れるのではないでしょうか?
一緒にいて疲れる人に心を開くことは滅多にないですよね?
一方で一緒にいて居心地の良い人には自然と心を開くのではないでしょうか?
もしあなたが、NLPの知識を使って身近な人を良い方向に導いていきたいと思ったとき、
もし
- 相手が話を聞いてくれない
- 反論される
- 効果が出ない
というときには、こちらの「伝え方」に原因があるかもしれません。
相手の優位感覚を知り、それにこちらから歩み寄ってあげるイメージでこれからはコミュニケーションをしてみてください。
それではまた次回をお楽しみに!
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