腸腰筋のストレッチで腰痛や姿勢の改善を目指しませんか? 固くなると腰痛はもちろん、さまざまな体の不調を招きます。全米アラインアンス認定トップヨガインストラクターが、自宅で簡単にできる腸腰筋のストレッチを紹介します。
腸腰筋を鍛えることのメリット、そしてトレーニング方法とストレッチ方法をパーソナルトレーナーが解説。
腸腰筋とは?
私たちが感じている腰痛のほか、姿勢の維持にも深く関係しているのが、「腸腰筋(ちょうようきん)」という筋肉です。
腸腰筋は、ふだんはあまり意識することがない筋肉ですが、上半身と下半身をつなぎ、姿勢を安定させる大切な役割があります。まずは、腸腰筋の位置や働きについてくわしく見ていきましょう。腰痛と腸腰筋との関わりについても解説します。
腸腰筋の位置は腰から太ももの付け根にある
腸腰筋は腸骨筋、大腰筋、小腰筋の三つの筋肉の総称。
「腸骨筋は名前の通り腸骨(骨盤)に付着している筋肉で、骨盤と太ももの骨を繋ぐ筋肉です。
一方の大腰筋は腰(背骨)と太ももの骨を繋ぐ重要な筋肉で、骨盤をまたいで上半身と下半身を繋ぐ唯一の筋肉なので、骨盤のポジションや姿勢、歩行など様々な動きに影響を与えます」
腸腰筋は、腰の骨である「腰椎(ようつい)」から太ももの付け根についている筋肉です。
腸腰筋は次の3つの筋肉が1つにまとまってできています。
- 大腰筋(だいようきん)
- 小腰筋(しょうようきん)
- 腸骨筋(ちょうこつきん)
腸腰筋の中でも腰椎についているのは、大腰筋と小腰筋で、腸骨筋は骨盤についている筋肉です。また、腸腰筋には次のような2つの特徴があります。
- 体の深い位置にあるインナーマッスルである
- 腰や骨盤、股関節といった複数の部位にまたがる
インナーマッスルとは体の深い部分にある筋肉のこと。「深層筋」ともいわれ、体を安定させる役割を持ちます。
また、腸腰筋は腰や骨盤から、足の付け根の関節である股関節まで複数の部位をまたがっているため、さまざまな体の動きや姿勢に影響を与えています。
表面的には見えない筋肉なのであまり意識することはないかもしれないが、お尻や太ももなどの下半身の筋肉と合わせて日頃から意識的に鍛えてほしい。
「ヒップアップに重要な中殿筋と並ぶくらい筋肉の体積が大きいので、大きな筋肉を鍛えて代謝を上げたいという人も避けては通れません。また、横隔膜とも深い関係があることで呼吸にも影響を及ぼす可能性があります。位置としても機能としても体の中心的な存在の筋肉であると考えておきましょう」
腸腰筋の働き
「腸腰筋が固くなると骨盤が前傾しすぎてしまい反り腰になります。また逆に弱っていると骨盤が後傾してしまうので猫背を招きます。近くに太い血管も通っているので、下半身の冷えや腰痛にも繋がりかねません」
腸腰筋の働きは骨盤を前傾させて姿勢を美しく保つこと。腸腰筋の正しい働きは若々しい姿でい続けるためにも大切です。
他にも太ももをお腹に近づけるような脚の引き上げ動作に大きく関与します。つまり、歩行の際に非常に重要で、よくつまずいてしまう人は腸腰筋が弱っている可能性も考えられる。
「日頃から運動習慣のある人は腸腰筋が発達しており、特に陸上選手など脚の速さとも相関関係があります。逆に腸腰筋が小さい人ほど寝たきりやメタボになりやすいため、弱化は肥満に直結すると考えてください」
腸腰筋が「痩せ筋」と言われる所以の一つは、弱くなることで太ってしまうことが明確だから。
地面から得る大きな反力を進む力に変換する筋肉なので、歩行スピードや歩幅などあらゆる角度から普段の動きを活発にしていくことで、意識的に使うことができる。
腸腰筋が固くなり腰痛につながる3つの原因
腸腰筋を期待えるメリット
・姿勢改善
腸腰筋が弱くなると骨盤が後傾し、猫背に繋がる。特に加齢と共に腸腰筋が弱くなることで背中が丸まってしまう人は多い。
そういった不良姿勢にならないためにも普段から積極的に活動し、腸腰筋をアクティブにしておくことで良い姿勢の維持、悪い姿勢の改善に繋がる。
・便秘解消
腸腰筋は深層に位置するため、内臓を支える働きもある。腸腰筋の筋力と柔軟性は腸のコンディションを整えるためにも非常に重要。
特に大腸と密接していることから、腸腰筋の働きが便通にも影響を及ぼすことは大いに考えられる。
・腰痛予防
腸腰筋が固くなると、骨盤が過度に前傾してしまい、その結果背骨に大きな負担がかかり腰痛を発症しやすくなる。
長期に及ぶと下半身にも影響を及ぼし、反張膝やO脚も引き起こしてしまうため、日頃のストレッチを怠らないことで腰痛予防から全身の調整に繋がる。
腸腰筋が固くなり腰痛につながる3つの原因

young woman suffering from back pain
「腸腰筋が固い」という自覚がある人は少ないと思いますが、誰にでも当てはまるような日々の生活が原因となっています。
腸腰筋が固くなる理由には、次の3つがあげられます。
- 長時間のデスクワークで腸腰筋が縮んだまま固くなる
- 冷えにより血行が悪くなる
- 腸腰筋の使いすぎで疲労がたまる
次から、それぞれの原因をくわしく解説します。
◆デスクワークで常に腸腰筋が縮んだまま固くなる
まずは、多くの現代人が当てはまるデスクワーク。イスに座った姿勢は股関節を曲げた状態になり、上半身と下半身の間にある腸腰筋は縮んだ状態に。その姿勢を長時間続けると、腸腰筋がそのまま固くなってしまうのです。
そのため、イスに座る時間が長い人は、腸腰筋が固くなりやすいといえます。
腸腰筋が縮むと、骨盤が前に傾いて、腰椎が反る原因になるため、腰痛につながりやすくなります。
◆冷えにより血流が悪くなる
体が冷えると、自律神経や筋肉の働きにより血管が収縮して、血流が悪くなります。腸腰筋は腰や股関節を通る太い血管から栄養を受けて、やわらかさを保っています。
そのため、冷えにより血流が悪くなると、周辺の血管からの栄養が行きわたらなくなり、腸腰筋が固くなります。
筋肉は伸びたり縮んだりすることでポンプのように血液を送り出します。
そのため、腸腰筋が固くなることで血液がとどこおり、余計に血流が悪くなるという悪循環に陥ります。その結果、腰痛を引き起こしてしまうのです。
◆腸腰筋の使いすぎで疲労がたまる
腸腰筋は使いすぎで疲労がたまることでも固くなります。
使いすぎると筋肉が常に緊張した状態となり、血流を妨げてしまうからです。
先ほどご説明したように、血流が悪くなると筋肉に栄養が届かなくなったり、疲労がたまりやすくなったりして、固くなる要因になります。
腸腰筋は股関節を曲げる働きのある筋肉です。そのため、次のような運動やスポーツが使いすぎの原因になります。
- 階段の昇り降り
- サッカー
- ランニング
- ウェイトトレーニング
腸腰筋に疲労がたまると固くなるだけでなく、動きにくくなり、姿勢を安定させる力が低下。その結果、腰痛を招くのです。
腸腰筋のストレッチで腰痛が改善する3つの理由
固くなった腸腰筋はストレッチでほぐすことでやわらかくなり、力も入りやすくなります。腸腰筋のストレッチで腰痛が改善する理由は3つあります。
- 姿勢が安定する
- 腰の筋肉への負担が軽くなる
- 血流が改善する
腰痛を改善する理由を知っておくと、ストレッチを続けるモチベーションにもつながります。
次からくわしく見ていきましょう。
姿勢が安定する
腸腰筋のストレッチで柔軟性がアップして力が入りやすくなると、腰にかかる無理な負担が軽減し腰痛が改善します。
また、腸腰筋が柔軟になれば、腰が反りすぎてしまう“反り腰”が改善する点も、腰痛の発生を防ぐポイントになります。
腰の筋肉への負担が軽くなる
腸腰筋のスレッチにより、姿勢や股関節の動きが改善されると腰の筋肉にかかっている負担が軽くなります。
特に腸腰筋が固くなり、股関節の動きも悪化すると、しゃがんだり、中腰になったりするときに、股関節ではなく腰ばかりが動きます。そのため、腰の筋肉に無理な負担がかかるのです。
腸腰筋が柔らかくなれば、腰、骨盤、股関節がスムーズに動きます。筋肉をバランス良く働かすことができると腰が楽になり、腰痛が気にならなくなるでしょう。
血流が改善する
ストレッチによる腸腰筋の柔軟性が高まると、腸腰筋周辺の血流が良くなります。
先にご説明したように、腸腰筋は深層部にあるインナーマッスルです。近くにさまざまな太い血管が通っているため、腸腰筋がほぐれることで全身の血流が良くなります。
腰周りの血流が全体的に良くなることで、疲労物質の蓄積や筋肉の緊張を防ぐことができ、腰痛の改善につながるでしょう。
他にもある!腸腰筋のストレッチによるうれしい3つのメリット
腰痛の改善以外にも腸腰筋のストレッチにはうれしいメリットがあります。ストレッチを続けて、より快適な体を目指しましょう。
足があがりやすくなる
腸腰筋は股関節を曲げる筋肉です。ストレッチによって腸腰筋自体が柔らかくなると、足があがりやすくなります。日常生活や運動をするときに、股関節周りがスムーズに動くことを感じられるでしょう。
呼吸がしやすくなる
意外かもしれませんが、腸腰筋は呼吸にも関係しています。
呼吸をするときに働く「横隔膜(おうかくまく)」と腸腰筋はつながっています。そのため、腸腰筋ストレッチを続けると、横隔膜も動きやすくなり、呼吸がしやすくなる効果が期待できます。
深い呼吸が自然とできるようになると、体に酸素をたくさん取り込むことができ、疲労回復やリラックス効果など健康維持に役立ちます。
代謝が良くなりダイエットにつながる
先にご説明した通り、腸腰筋の近くには太い血管が通っているため、ストレッチで血流が良くなると体の代謝も改善します。その結果、脂肪が燃焼しやすい体になり、ダイエットにつながります。
腸腰筋を鍛える筋トレ🔥
前述したように、腸腰筋はインナーマッスルです。インナーマッスルのトレーニングはだいたい40%くらいの力で行うのがよいとされています。
それ以上の力で行うと、アウターマッスルの作用が強くなるためです。自重トレーニングや日常生活の動作で鍛えるのがよいでしょう。
レッグレイズ
- 仰向けに寝ます。
- 膝を伸ばしたまま両足を上下させます。
- 10~20回×3セットを目安に行いましょう。
足を下ろした際、床につけないで続けると効果が上がります。足を下ろす際にゆっくり行うとさらに効果的です。
レッグライズ 7回×3セット 一緒にやってみよう!
3分の4種目で腸腰筋を鍛えるトレーニングです!
【種目】
①スタンディングニーレイズ(左右1セットずつ) 腸腰筋
②8の字レッグレイズ(左右1セットずつ) 腸腰筋
③後屈(左右1セットずつ) 腸腰筋・脊柱起立筋
④前屈(45秒1セット) 腸腰筋・ハムストリング・大臀筋
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